胸が痛い。苦しい。
圭汰に別れを告げられた頃より、ずっともっと辛い。
それはきっと、灯がいるからだろう。
私は自分の想いを溢れさせたのと同時に、灯のことを裏切ったんだ。
灯は何も気づいていないけれど、私と圭汰の関係を知らないけれど、私の心は灯を裏切った。
『花火上がるまでには帰って来るから』
そう言って灯を待たせたまま、私は逃げた。
圭汰とキスをして、逃げてきた。
最低だ。
裏切られる辛さは、十分理解しているのに。
いや、もしかしたら、もうずっと前から私は、灯のことを裏切っているのかもしれない。
だって、嘘だったから。
灯と付き合ったのも好きだからではなかったし、灯のことを愛しているとか言いながら、心の底では圭汰のことを忘れられていなかった。