方向音痴のくせに、帰省本能はあるらしく、走っている内に家に辿り着いた。

灯のことを置いて、転んだ圭汰を放って、私は逃げて帰って来た。

情けない。最低だ。


家に帰るとすぐに自室に引きこもった。

ベッドの上に、浴衣のままうつ伏せになると、自然と涙が出てきた。

「馬鹿、馬鹿、馬鹿・・・・」

シーツが少しずつ濡れていく。


圭汰とキスをしてしまったあの瞬間。

私は、圭汰のことを好きだと思った。
懐かしさとかじゃなくて、好きだと思った。

今まで必死に堪えていたのに、想いが溢れた。
好きだという、単純な想いが、心の中から溢れ出た。