「携帯・・・も、置いて来ちゃったし」
自分が置かれている状況に、不安を感じる。
圭汰や灯のこと、今のこの状況。
苦しさとか辛さとか不安とかがぐちゃぐちゃに混ざって、鼻の奥がツンと痛んだ。
「・・・やっと見つけた」
だけどその時、そんな声と同時に手首を掴まれ、私は振り向く。
「・・・ったく、この方向音痴が」
「圭汰・・・・」
呆れたように微笑む彼を見た瞬間、泣きたい気持ちなんて、綺麗さっぱりなくなった。
けれど、その笑顔に安堵して、少しだけ涙腺が緩む。
「やっぱ馬鹿だな、お前」
「馬鹿じゃないもん。首席入学したもん」
「その後、落ちぶれていったけどなー」
「それでも、十位以内には入ってるし」
「・・・・はあ。強がんなよな」
ぽんっと、圭汰の大きな手が頭に乗せられる。