「・・・そういうこと、言わないで」
圭汰は、本当にずるい。
気になったとか、言わないで。私に興味を示さないで。
そうやっていつも、教師らしくしてくれないから、こっちは困っちゃうんだよ。
気持ちが、溢れちゃいそうになるんだよ。
唇を、ぎゅっと噛んだ。
そうやって必死に想いを消しているのに、圭汰は何も分かっていない。
「綺麗だな、浴衣姿の冬穂」
「・・・っ」
私は何も言わないで、圭汰に背を向けて歩き出した。
もうこれ以上、圭汰と平気な顔で会話することは出来ないと思ったからだ。
「ちょっと、冬穂?」
圭汰の呼びかけには応えなかった。