「冬穂・・・・」
「帰ります、さようなら」

私は自分の鞄を勢い良く手に取って、さっさと教室を出ていった。


校舎の外で微かに聞こえる、運動部のかけ声。

私は廊下に足音を響かせるくらい、早足で校舎を後にした。


圭汰は、私に何と言おうとしたのだろう。

考え始めるとまた、思い出してしまう。
それがとても嫌なのに、考えないという選択が、何故か出来ない。


圭汰と別れて灯と付き合ってからも、私は何かある度に、圭汰のことを思い出している。
もう終わったのに、いつも圭汰のことばかりだ。


『未練なんか、これっぽっちもない。』

そんなことを言い放った自分が恥ずかしくて、こんな自分にムカついて、少しだけ泣いた。



最悪だ。

これだから、“元カレが担任”は嫌なんだ。