圭汰は落ち着いた性格なのに、表情が豊かだ。
さっきまで笑顔だったのに、今は切なげに私を見つめている。
「ううん、違うよ」
私は椅子から立ち上がった。
「俺、冬穂には、本当に悪いことをしたと思ってる。謝って済むことじゃないし、冬穂に恨まれても仕方ない。だからこんなことを言うのは可笑しいけど、本当に俺は・・・」
「私は、岡本先生のことを恨んだりなんかしてない。そんな幼稚じゃないし、未練なんてこれっぽっちもない。・・馬鹿にしないで」
圭汰の話を遮って早口で言ったのは、嘘の気持ち。
ただ、圭汰の言葉を聞きたくなかっただけだった。
ごめんって謝られても、辛そうな顔を見せられても、私の心は救われないし、私達の関係はもう、修復出来ないから。
だから、言わないでほしい。
圭汰の懺悔(ざんげ)など、私は見たくない。