「問題、解いてて。途中式を黒板に書いてたの」
嘘、だ。私は今、嘘を吐いた。
「へえ。ホントだ、全部解き終わってる」
彼が手に取ったプリントは、相合傘を書く前に私が解いていた、数学の宿題プリント。
愛しい、あの人からもらったプリント。
「・・・あ、じゃあ、これからファミレス行こうよ」
プリントを凝視していた彼が、唐突に私に視線を向けて、そう提案した。
「どうせ、答え写す気でしょ」
私が呆れながら言うと、彼は苦笑いして、
「バレた?」
と、可愛らしく舌をちょこっと出す。
「もう・・・。いいよ、行こう」
私は黒板に備え付けられているチョーク入れに、手に持っていたチョークを入れた。