胸が痛くて、なのに私は、じっと灯の顔を見つめた。
「えっ、何?確かに意外だったけど、そんなに驚く?」
どうやら灯は、私の反応を別のことと勘違いしているようで、不思議そうに首を傾げた。
私は灯からさっと目を逸らすと、黙り込む。
好きだと気づいたら、驚くほど何も言葉が出てこなかった。
そんな私に、灯は何故か急に慌て始めて、
「いや、噂だからな!確かに、二人が一緒にいる所よく見てるし、前は部室でキスしてたけど・・・あっ、いや、それも思い違いかも!だから、その・・・」
灯は一体、どんな勘違いをしているのだろう。
私が、話したこともない烏丸くんのことを好きだ、とでも思っているのだろうか。
それとも、噂話が面白くないから怒っているのだ、とでも思っているのだろうか。
キスしていたなんていう立派な証拠まで出しながら、必死に噂を嘘だと言っているなんて、どう考えても平静じゃない。