「・・・もういいもんっ!蒼人の悪口歌ってやる!」
灯は拗ねたように頬を膨らませ、そんな冗談を言った後、一曲、歌を予約した。
すぐさま流れ始めたのは、聞いたことのある有名な歌の前奏。
「寂しくて空を見上げたら、君に会いたくなったんだ」
Aメロが流れて歌い出した灯の声が、とても甘くて綺麗で、私は目を見開く。
灯って歌上手かったんだ、と今更ながら知って、私は椅子に腰かけ、その歌声に聴き入った。
蒼人くんは凄い。
けれど、灯だって負けていない。
私からしたら、灯もすごくカッコいいよ。
そう言いたくなって、だけどそれは言っちゃいけないから、歌が終わるまで、私は何も言わずに灯の横顔を見つめていた。
「・・・ちょっと、トイレ行ってくるわ」
しばらくそうして楽しく歌っていると、蒼人くんがそう言って立ち上がった。
「おう。いっといれー」
「いってらっしゃい」