その物体のほとんどがベッドの下に潜り込んでいて、はっきりとした形は見えなかったため、私はそれを引っ張り出す。
「あっ・・・・」
そして、それの形がしっかりと見えた瞬間、小さな声が漏れた。
サンタクロースの帽子を被った、見覚えのある白い犬のぬいぐるみ。
クリスマスイブの日、灯にもらったものだ。
それをしばらくボーっと見つめていると、ふと、脳裏に、ある思いが浮かんだ。
圭汰と、別れよう。
怖いくらい自然に、呼吸をするような感覚で、そう思った。
そして同時に、ずっと心を覆っていた雲がなくなり、この今朝の空のように、青空が見えた気がした。
ずっと好きだった人。
もちろん、今も好きな人。
だけど、たった今、気づいた。
私達は、一緒にいてはいけなかった。
私達はもう、手を取り合って歩いてはいけなかった。
それは、圭汰が既婚者であるからとか、そんな理由じゃない。