しばらくして、圭汰は私に頭を下げた。
私はそんな圭汰を、涙を溜めた目でじっと見つめる。
けれど、何も言えなかった。
圭汰はゆっくり頭を上げると、少し俯きながら話し出す。
「・・冬穂には、苦しい思いをさせてると思う。俺はもう結婚しているし。でも、冬穂のことを愛していないわけじゃない。それだけは、分かっていてほしい。本当、ごめんしか言えないんだけど・・・ごめんな」
しばらく考えて出した、圭汰の返答だった。
愛していないわけじゃない。
それは知っているし、圭汰からの愛を感じていないわけではない。
ただ、やはり一番ではなかった。
それが、辛かった。
圭汰は何も悪くない。
返答だって、誠意が伝わってくるものだった。
だけど、どこか腑に落ちなくて、心の靄(もや)は全く晴れなかった。