「えっ・・・・」

そして、目を大きく見開く。

目の前にいる人物は、ニカッと歯を見せて笑い、それがどこか懐かしかった。

「今日さ、歩いてたら目の前に蜂がいて。まじでビビったわー」

楽しそうに笑うが、私は固まったように見つめたまま、愛想笑いすら返せない。


当たり前だ。

だって、何故話しかけられたのか分からないから。

・・・灯に。


人違いでもされているのかもしれない。

例えばそう、望未ちゃんとか。
いや、いくらなんでもあり得ないか。


「冬穂?」
「・・・・っ」

夢でも見ているのかもしれない。
それなら、さっさと覚ましてしまおう。

私は灯を無視して歩き出した。
そして、早足で真っ先に職員室へ向かう。

理由はもちろん、圭汰に会うためだ。
圭汰に会って、自分の気持ちを再確認するためだ。