灯の表情が曇った。

きっと、その時のことを思い出しているのだろう。

「びっくりしたよ。まさか、あの二人が付き合っていたとは思わなかったから。けど、同時に、すごく最低だと思うんだけど、嬉しかった。俺にもチャンスが回ってきた、って、喜んでしまったんだ」

俺は灯の顔を見た。

灯は前をじっと見つめて、昔の記憶を思い出していた。

それは、辛い記憶だろうか。
それとも、楽しい記憶だろうか。

同じように前を向いてみても、俺に灯の記憶を見ることは出来ない。


「二年生になって同じクラスになった時は、本当に嬉しかったよ。冬穂に告白して、付き合えるようになったことも。・・・それが例え、岡本を忘れるためだとしても、俺を想ってくれていなくても。一緒にいられるだけで、幸せだった。だけどやっぱり、偽りの恋愛って、続かねえもんなんだな」

灯は、悲しそうに笑った。