「・・・岡本のことか?」
「えっ・・・・」

灯は俺の言葉に、驚いたように目を丸くさせ、固まる。
俺はそんな灯をじっと見つめた。


「・・・お前、知ってんの?」
「まあ、ある程度は」
「そっか・・・・じゃあ、聞いてくれるか?俺の話」

そう言って、切なく微笑んだ灯に、俺は小さく頷いた。

すると、灯はゆっくりと口を開いた。


「・・・去年、お前に会いに、ちょくちょくお前の教室に行ってたじゃん?そこで、冬穂のこと見て・・・一目惚れ、だった」
「うん」
「マジで好きで、冬穂を見るために、お前に会いに行ってた所もある」
「最低だな」
「ははっ、悪かったって。・・・で、いつ話しかけようかって考えてたんだけど。・・・あの日、たまたま聞いちゃったんだ。視聴覚室の前で」

灯のことを最低だなんて、本当は思っていない。
ただ、少し場を和ませたかっただけだ。

それは、灯も分かっているようだった。

だけどもう、ふざけるのは止める。


「冬穂と岡本が話しているのを、外から聞いていた。・・・別れ話、だった」