自分じゃなく、本命の彼女を選ばれる。
自然の摂理なのかもしれないが、女として、何よりの屈辱を味わった。
今思い返せば、圭汰を一発殴れば良かった。
最低、と罵れば良かった。
涙を目にいっぱい溜めて、笑顔でさようなら。
なんて、しなければ良かった。
そうしたら今頃、きれいさっぱり吹っ切れているかもしれないのに。
忘れもしない、四月八日。始業式。
生徒に囲まれ照れくさそうに微笑む圭汰の左薬指に、銀色の指輪が光っていた。
私と圭汰が付き合っていたことを知っている人は一人もいない。
お互いの立場上、誰にも私達が付き合っていることを言わなかったし、気づかれないよう、細心の注意を払っていたからだ。
だから、私達の関係が終わっても、学校生活は、普段と何ら変わりなかった。