普通に話せばいいのに、平然としていればいいのに、返事が思い浮かばず、私は目を泳がす。

とりあえず、何か言わないと。


「えっと・・・」
「とーもるっ!何してるの~?」
「っ・・・!」

何か言葉を返そうとした時、灯の背中に、甘ったるい声で誰かが抱きつく。
その誰かを目にした瞬間、私は無意識に灯から目を逸らした。

「あれー?冬穂ちゃん?どうして、二人が一緒にいるの?」

・・・望未ちゃんだ。

顔を見なくても、彼女が私を睨んでいるのが分かった。
声が水をかけられた時と同じくらい低くて、恐かったからだ。


「ちょっ!止めろよ!」
「なんでー?いいじゃーん」

仲睦まじい二人の傍にこれ以上居ていられなくて、私は小走りで二人の横をすれ違った。

「あっ、ふゆ・・!」

灯の横を通った時、時間がスローモーションのように長く感じて、余計に辛かった。


今日は本当に、色々と最悪な日だ。