私はそう吐き捨てると、圭汰に背を向けて走り出した。

本当に子供だと分かっているけれど、なんかもう、全てが辛かった。



「・・・なんなの、もう!大嫌い!」

ぶつぶつと一人、愚痴を言いながら渡り廊下を歩く。

愚痴を言っているのは、そうすることで、泣きそうな気持ちが込み上げないようにするためだ。


「・・・・冬穂?」

すると、前方からそう名前を呼ばれ、私は視線を足元からそちらに上げた。

「っ!・・・・とも」

そこには、クロワッサンを手に、私を不思議そうに見つめている、灯の姿があった。
私は歩を止める。

なんなら、一歩ぐらい後退したい気分だ。

どんな反応をすれば良いのか分からず、戸惑っている私に、灯はほんの少し躊躇いながらも、

「どうした?なんか、ぶつぶつ言ってたけど・・・」

と、気まずそうな笑顔を浮かべた。