ドキッと胸が震えて、私は教室のドアの方を見やった。
「とも・・・」
私がドアの前に立つ人物の名前を呟くと、その人物は二カッと白い歯を見せて微笑んだ。
「驚いた?」
彼は無邪気な声で、楽しそうにそう聞いてくる。
「うん。びっくりしちゃったよ」
私は彼とは目を合わさずに微笑みながら、黒板に書きかけた相合傘を消す。
彼はそんな私に、へへっ、と笑顔で近づいてくる。
「何か書いてたの?」
「え?あっ、うん。これ・・・」
私は少し体を捻らせ、自分の背後にある教壇を指差した。
そこには、数学のプリントが一枚。
私のものだ。