「・・・・くそっ」

人波に隠れて見えなくなった、冬穂の“跡”を見つめながら、俺はそう吐き捨てた。
そして、買ったばかりの二つの缶を持っている手の甲を口に当て、必死に高ぶる感情を抑えようとする。

しかし、そんなことで落ち着くような、軽い気持ちではなかったようだ。

「なんでだよ・・・」

視界が滲んだと思った瞬間、生温かい涙が、頬を伝った。


今までの思いが全て、涙となって流れていく。

こんな情けない男だから、冬穂は行ってしまったのかもしれない。


俺は、唇をぐっと噛み締める。


俺じゃ、駄目だった。

どれだけ愛していても、冬穂の気持ちは、俺に向いてくれない。
そんな現実が、ものすごく痛かった。

「くそっ、くそっ、くそっ・・・!」