私は頷くと、

「じゃあ、ね」

と、鞄を肩にかけて、歩き出そうとした。

・・・が、左腕を灯に掴まれ、それを阻止される。


「とも・・・?」

振り返ると、灯は俯いていて、何かを考えているようだった。
私が首を傾げると、灯はゆっくりと顔を上げ、私を見て、

「・・行くなよ」

と、ただ一言だけ、はっきりとした声で言った。

「えっ・・・?」
「行くなよ、冬穂」
「っ・・・・」

私をまっすぐ見つめる灯の瞳が、悲しそうに揺れていて、私は言葉を失う。
こんな灯は、初めて見たからだ。


・・・だけど。

「・・・離して。お願い」