すると、灯は少し口角を上げ、

「・・・良かった」

と、一言だけ呟いた。

「ん?何が?」
「だって冬穂、笑ってくれてるから」
「っ・・・・」

その切ない笑みに、胸がつんと痛む。

灯が、私のせいで傷ついていることが分かった。
だけどそれを、灯は、自分が私に何かしたと思っていることも分かった。


違う。

違うんだよ、そうじゃない。

灯のそんな笑顔を見たいわけじゃない。
灯を苦しめたいわけじゃない。
灯が悪いわけじゃない。

それなのにどうして、こんなに上手くいかないんだろう。

ただ、気持ちを伝えるだけなのに。
別れようと、言うだけなのに。

それだけのことが、何故か上手に出来ない。


「最近、なんか冬穂、俺のこと避けてるみたいだったから・・・」

私の顔色を窺うように目を向けて、灯は自分の髪をくしゃっと触る。

私は灯から目を逸らして、

「うん・・・」