連れてきた下郷さんと
朝のSHRと1限をサボるつもりで


旧校舎の音楽室に入ると
すぐに本題に入った。


「ピアノの事は誰にも言わないで。
あと、この目の事も誰にも言わないで!
お願いだから。」


俺はどうしても2つは秘密したくて
頭を下げて彼女にお願いした。


彼女はため息1つついて


「ピアノの事は秘密にするけど
目の事はどうしてなの?
昨日も言ってたけど
何があなたにとってそんなに怖いの?」


って彼女は教室とは違う
落ち着いた様子で言った。


彼女には言わないけど
この目のせいで小・中学校の時
散々イジメにあってきた。


けど両親はほとんど
海外出張とかで家に居なくて


先生も気付かないふりで
友達なんてもちろんいなくて


頼れる人が周りに一人もいなくて
話せる人が周りに誰もいなかった。


両親がいた所で家の両親には
話さなかったと思う。


俺の事はピアノしか興味が無いから
今は俺のピアノにも興味無いと思うけど


まぁ、そんな感じで
俺は1人で考えた結果


この目は人に見せないのが
1番いい答えだと思った。


それからは眼帯したり、
黒のカラコン試したり


でも、どれもイマイチで
結局、前髪を長く伸ばした。


注目されないように
地味男に徹するようにした。


ただ、それだけなんだけど
俺はまた、イジメにあうのが


怖いのかもしれない。
その怖さがある限り


俺の前髪は短くならないのかも知れない。
だからと言ってこの目の前にいる彼女が


この俺の不安を取ってくれる訳でもないし
とって欲しいわけでもない。


だから、俺は彼女の質問の答えに
「昨日言ったのと同じだよ。」


って距離を取るように素っ気なく答えた。