坂内さんが途中で俺の前髪に
手をかけた時は流石に止めたけれど


春樹とグルになってるらしく
止めようと出した手は春樹に止められた。


どんな抵抗をしても
前髪はどんどん軽くなって


視界が開いてきて
彼女が「良し!OKー!」


って言って鏡を見たら
俺の前髪は無くなってて


オールバックの別人になっていた。
少しだけ化粧もしたからか


原型が俺だとは誰もわからない感じだ。
もう、ほんと最悪。


結構、キレそうなんだけど
彼女のこの後の言葉次第で


俺のキレが噴火するかどうか
決まるぐらいギリギリな感じ。


彼女は少し俯いて
珍しくウジウジもじもじしながら


「ホントはすっごい悩んだんだけど!
でも、松田くんのこの姿見たら
悪くいう人いないと思うし、
もし居たら私がフルボッコにしようと
覚悟を決めてこうしたの…ダメ…かな?」


って上目遣いで
俺の顔色を伺う感じで言った。


まぁ彼女の上目遣いにグッときて
許すとかそういう訳じゃ無いけど


悪く言われたら言ったヤツ
フルボッコにしてくれるし


この髪型を台無しにして
俺が別の髪型に出来る訳じゃ無いから


「もう、いいよ。まだ少し怒ってるけど
もし悪く言われたら
フルボッコにしてくれるんでしょ。」


っていつもの無愛想で素っ気なく言った。
彼女は「うん!」と元気よく言った。


俺は「じゃあいいよ。もう怒らないから」
と言って許した。