そう言うと、また渚さんが泣いてしまった。

それが何の涙なのかは分からない。

泣き崩れる渚さんと、
ポーカーフェイスの類。

みんな、何も喋らない。

シン……と静まりかえる車内。

やがて車の中から流れてくる景色は懐かしいものに変わっていき──

ラーメン屋についた。




* * *


「葉月っ、すまないっっ!!」


ラーメン屋に着き、のれんをくぐるとほぼ同時に、大将さんに頭を下げられた。

いきなりの事に驚く私に、また謝罪を重ねられる。



「葉月を追い出してからっ、俺はずっと後悔してた……葉月が店の金盗むとか、何か絶対わけがある事くらい、葉月の意思でやったことじゃないことくらい普通に考えれば分かる……!

それを、追い出して、冷静になってから気がつくなんて……

信じてやれなくてすまない!」



90度…いやそれ以上に体を折って謝罪する大将さん。

大将さんは、渚さんがしたことを何も知らない時から、私が自分の意思でお店のお金を盗むなんてありえないって思っていてくれていた。


それが嬉しくて……泣きそうになった。


ずっとずっと、こんな言葉がほしかった。



でも……私がお店のお金を盗もうとしたことにかわりない。