* * *
結局被害者の私が起訴しなかった為に、
渚さんが罪に問われることはなくなった。
そのまま、類の車に乗って、あのラーメン屋まで3人で帰ることになった。
渚さんは車の中で泣き崩れ、
何度も何度も私に泣きながら謝った。
「ごめん……。ごめんなんて言って許されるような事じゃないってわかってるけど、ごめん。
俺……高校の時から付き合ってた彼女が、
癌で死んだんだ。
元々長くないって分かってたから、覚悟はしてたらつもりだったんだけど……
いざ亡くなったら、自分が壊れていった。
だから、ヤケになって葉月ちゃんに結月重ねて、あんなことしてた。
そしたら、当然体重ねてた相手は結月じゃないって気づいて……
それがたまらなくて、店の金を盗むように葉月ちゃん脅してた。
本当、ごめん…………ごめん。ごめん……」
壊れたように、ごめんごめんと繰り返す渚さん。
結月……というのは、恋人の名前だろうか。
何か理由があるだろうとは思っていたけれど、まさかそんな事があったなんて知らなかった。
だからって許すとかそういうことではないけれど、恋人が亡くなるって、どれだけ辛いことなんだろう。
渚さんは、どれだけ辛かったんだろう。