「───渚さん。私は、あなたを起訴しません」





そう言った瞬間に、
渚さんが目を見開き、刑事さんが身を乗り出した。




「何を言ってるんですか。この男に強姦されたんでしょう!?」


怒鳴らんばかりの大きな声でそう言って目を丸くする刑事さん。

驚くのも当たり前だと思う。

だって、私だって自分で言っておきながら自分で驚いてる。

でも、決めたの。
私は渚さんを起訴しない。


「おい葉月、本気か……?」

そういって小さな声で尋ねる類に、私は小さく微笑んで返した。


「刑事さん。強姦罪は、被害者の女性が起訴しない限りは罪には問われないんですよね?」

私のその質問に、刑事さんが頷く。


「そうです。ですからあなたが起訴しない限り、罪には問われないんです。

本当に、起訴しないんですね……?」




「はい」



私は、そう言って頷いた。