その後少し二人で話し合ったけど行き詰まって、シゲに相談することになった。
あの電話以来、私はますます距離感を掴みかねている。
シゲは全くいつも通りで、変に気にしてるのは私だけと言うのはわかっている。中学の時からいつもそうなんだから。自分が特別なんじゃないかと勘違いしてはいけないと、心に刻む。
「海っていうか、水族館じゃないの、それ」
作業場の隅にあるシゲ専用の机で、頬杖をついて何かの資料を見ながらも、一応ちゃんと返事が来る。
「春ちゃんと行っただろ、三人で。結衣は水槽に張り付いて動かなかった」
ふーん、覚えてるんだ。いろんな種類の魚が泳いでいる巨大水槽があるあの水族館。そうか、そのイメージかもしれない。
「先生と三人で水族館?」
「友達みたいなもんだったんだって言っただろ」
尚人くんに答えながらも、目は資料を追いかけていて、何か書き込んでいる。
春ちゃんの話が出たから聞いてみる。
「シゲ、お盆休みは静岡に帰る? 春ちゃんちもそんなに遠くないんじゃない?」
「俺は電話で話したから十分。お盆休みとか別にないんだよ」
ダメか。春ちゃんの様子を見に行きたいけど、一人じゃ怖くていけないから、シゲを誘いたかったんだけど。
「結衣が行けば喜ぶだろうけど。俺はいいよ」