ねえ、私が好きって言ったの、嘘じゃなかったってわかっちゃったんだよね?


それでこんなことしたら、また期待するのわかってる?


単に、罪悪感で優しくしてるだけだったりしたら、本当に最悪だってわかってる?






後でって言われたけど、その日は尚人くんの送別会だと駅前のお店に大勢で向かうことになった。


私は直してもらった自転車で暗くなる前に帰ることにしていたから、会社の前でみんなと別れる。


シゲが駅に向かって歩き出した人たちから離れて近づいてきたけど、明日の電車のことを言われて、「気をつけて」とぽんと頭を叩いて戻ってしまった。






今日見た鳥の絵がどう仕上がるかぼんやりベッドの上で考えていた夜、守がふらりと部屋に入ってきた。


「今日、先輩俺のことなんか言ってた?」


いきなりそう聞かれて、言葉を失う。なんなの、突然。あんたも好きになっちゃった? やめてよ?


「あ、やっぱり聞いてない? こないだ俺んとこに純くんと二人で来て、本当の話聞いちゃったんだけど」


椅子の背を前にしてまたがって座りながら、さりげなく言う。


二人で? 本当の話?


「それならそうと言ってくれればいいのにさぁ。俺静岡ついてったり色々姉ちゃんのために考えてたのに。別に俺が聞いてまずい話でもないでしょ」


守もたいしたことではないと思ってそうだ。そうなの? 嬉しいんだけど、でもなんか肩透かしというか。そういうものなの?