「ほんの少しでも変わりたいって気持ちがあるなら、千帆は変われるよ」


柔らかな笑みとともに零されたのは、前向きな言葉。


そっと背中の押すように、優しく見守ってあげると言うように、そこに温もりが込められていることは伝わってきた。


だけど、変わることを拒むように三年近くもひとりでいることを選んできた私には、それは少しばかり残酷なものだった。


「そんなこと、無責任に言わないで……」


私のことを知らないくせに、と心の中で悪態をついて、クロを睨んだつもりだったけど、思っていたよりも眉が下がっていることに気づく。


それでも、気持ちだけは彼を睨んでいると、ふっと微笑が落とされた。


「無責任、か。たしかに、出会ったばかりでなに言ってるんだ、って思うかもしれない。でも……」


クロは自嘲気味に笑うと、息をそっと吐いた。


「俺は、千帆のことを知ってるから」


真っ直ぐな瞳が、また私を心ごと捕らえる。


「千帆が受験生じゃない頃から勉強をコツコツ頑張ってる努力家なことも、いつだって親に心配を掛けないように心掛けてることも……。それから、意外と繊細なことも」


視線を逃がす場すら与えてもらえない私は、彼の真剣な声に耳を傾けることしかできなかった。