「松浦千帆、七月二十日生まれ、A型、南高校三年二組、兄弟はいない」


「……え?」


クロが話している内容をすぐに理解できなかったのは、自分のプロフィールを説明されているのだと認めるのが怖かったから。


そんな私の気持ちを見透かすように、彼がクスリと笑った。


「言っただろ、俺は超能力者だって。なんでもわかるってわけじゃないけど、千帆のことは色々知ってるよ」


毒のない笑みなのにその裏になにか隠されているような気がして、警戒心を抱えながら咄嗟に立ち上がった。


「だから、なにもしないって。小娘には興味ないし」


「なっ……!」


二、三歳しか違わないはずの相手に必要以上に子ども扱いされてカッとなったけど、私の瞳を真っ直ぐ見つめるクロはふざけているつもりはないらしい。


「ナンパ目的ならこんな回りくどいことしないし、襲うなら昨日のうちにやってる。俺は本当に千帆と話がしたいだけなんだ」


それを裏づけるように真剣な声音で話した彼の言い分はもっともらしくて、それなら本来の目的はなんなのだろうと考えてしまう。


私と会話したって、別にメリットがあるとは思えない。


だいたい、二十歳の青年が“ただ話すだけの時間”なんて求めるものなのだろうか。