「そもそも、今日ここに来たのはあなたに文句のひとつでも言ってやるつもりだっただけなの。あなたと話すために来たわけじゃない」


コンビニに行くという言い訳をすっかり忘れていたことに気づいたけど、今はそれを気にする余裕はなかった。


「メリットだかなんだか知らないけど、私は別にあなたにそんなもの与えてもらうつもりはないし」


「でも、千帆にとっては結構いい条件だと思うよ?」


「いい条件?」


「言っただろ、『君と君の未来を少しだけ変えてあげる』って。すぐに目に見えるような変化がなかったとしても、一ヶ月経てば千帆にとってはメリットだったってわかるよ」


「……意味がわからない」


クロの言うメリットがなんなのか、少しだけ気になった。


ただ、もしそれを聞いてしまったらもう本当に引き返せないような気がして、あえてそこには触れないことに決めた。


「だいたい、一ヶ月も付き合えるわけないじゃない。私、受験生なんだから」


切羽詰まっているかと言われたらそんなことはないけど、大学受験をすることは決めているから貴重な時間を取られるわけにはいかない。


これを盾に話を進めようと決めた直後、ひとり考え込むように黙っていたクロが意味深な笑顔になった。