「これから一ヶ月……って言っても昨日もカウントしてってことなんだけど、夜にここで会って欲しい」


ニコニコと笑うクロは、私が反論する隙を与えないつもりのようだ。


「基本的には夜の八時から九時で、用事がある日は可能な時間からでいい。でも、あんまり遅くなるわけにもいかないし、会うのは十時までにする」


私が口を開くよりも早く話を進めていき、コミュニケーション能力が低い私はもちろん口を挟むタイミングがない。


「ただ、普通に話をするだけでいいんだ。今日の出来事とか、好きなものとか、そういう他愛のないことで構わない」


彼はそれを見透かすように私から視線を逸らさなくて、まるで物語を読み聞かせるかのように一定のリズムで話している。


「絶対に一時間以上は望まないし、一ヶ月経ったら終わりでいい」


その声音は心地好さを携えているかように穏やかで、反論したい私にとってはタチが悪い。


「その代わり──」


「勝手に決めないでよ」


ようやく口を挟んだけど、半ば強引だったせいで予想以上に強い口調になってしまった。


「なんで赤の他人の私が、あなたのお願いを聞かなきゃいけないわけ?」


クロにじっと見つめられて怯みそうになったけど、虚勢を張るように続けた。