晴れ晴れとした、満面の笑み。


この状況に似つかわしくないと思えるそれは、もしかしたら私が責任を感じないために繕われたのかと思ったけど……。


「人の言葉を持たない俺が、言葉を持てただけじゃなくて、千帆と同じ目線で話せるようになった。千帆の手を掴んで、こうして頬に触れて、伝えたいことを伝えられる」


クロの声には後悔が滲むことはなく、本当になにも悔やんでいないと言わんばかりに明るく話している。


「だから、千帆と過ごした日々と同じくらい、今も幸せなんだ」


しかも、彼は“幸せだ”なんて言うのだ。


命を縮めても幸せだ、と。


なにもしなければ、きっともっと一緒に過ごせたのに、クロは私のために違う道を選んだ。


だけど、後悔はしていないと言う彼に、私は戸惑いと悲しみを隠しきれない。


「クロ……」


クロと呼ぶべきなのか、ツキと呼ぶべきなのか。


きっとどちらでも正しかったのだろうけど、私は今の姿の彼と出会った頃に教えてもらった名前を選んだ。


「ごめんね……っ」


掠れた声で零したのは、涙混じりの謝罪。


クロがそんな言葉を望んでいないことはわかっていたけど、謝らずにはいられなかった。


すると、彼は私の気持ちを察するように苦笑した。