「おとといの夕方、慌てて帰るルミちゃん
と、会社の入口で、ぶつかったんだ。その時
ルミちゃんのバックから、CDらしきものがこ
ぼれ落ちたんだけど、ルミちゃんは急いでい
たし、個人用のCDなんていっぱいあるし、オ
レも気にもとめずに拾っていた。その後、紛
失騒ぎがあって、そして、ルミちゃんがここ
でバイトをしているって噂聞いたんだ。
××電気の長井さんもこの店の常連で、ここ
最近ルミちゃんが長井さんと一緒のとこ見た
っていう奴もいた。長井さんが、新商品の企
画部にいて、結構女に手が早いってことも聞
いてたし、もしかして、今度の件と何か関係
あるかもしれないって思ってここに来てみた
んだ」
 公平は、そう説明しながら私に極薄の水割
を作ってくれた。
 なんだか逆なんだけど、そのグラスを握り
しめながら、わたしは、思った。