た道を歩く夜。
 ちょっぴりロマンティックに包まれていて
 こうしていると、高校の頃に戻ったみたい
に感じるのに、現実が見え隠れする。
 せっかくだから、今夜だけ。せめて今夜だ
け、あの頃に戻ってもいいよね?
 波が打ち寄せるたび、時計の針が逆戻りし
ていく。
 海と空の水平線がわからない、ダークブル
ーに包まれた夜に、散りばめられた光の粒。
 今夜限りの夢を見た。
 海を背景に、懲りずに店のことで、揉める
2人だけど、
 「おまえの好みは、わかってるよ」
 「えっ?」
 波の音で聞こえなかった。

 外は雨。
 テラスのドアは、開いたまま、空気に時折
潮の香りを感じるおしゃれなレストランだっ
た。