雨音がやさしくて、静かで、泣きたくて、
感情が押さえられなくなって・・・
 そして、一世一代のわがままを、公平にぶ
つけてみた。
 「公平、キスして」
 絶対断られると思ったのに、なのに・・・
 公平のごつごつした大きな手が、私の俯い
たままのアゴをゆっくり引き上げて、そっと
キスをしてくれた。
 握っていた傘が転がって、透明の雨が、私
達を包んでいった。
 白い世界から青に変わる瞬間のやさしくて
せつない雨だった。
 その時の雨が、私を強くしてくれた。

 仕事が、終わって、そんなことボーッと考
えていると、突然メールがなった。
 公平からだった。
 内容は、“今度町田も誘って同窓会しよう
な”公平らしい無駄を省いた用件だけのメー
ルだった。