三島課長が、声をかけてきた。
 ただでさえ、三島課長と会うとドキドキし
てしまうのに、この廊下に人が来たらどうし
ようなんて考えたら、よけい緊張してきた。
 「はっはい暇です」
 俯いたままで言っている。
 「じゃあ、場所と時間あとでメールするか
ら」
 三島課長は、いつもと変わらない様子で、
しゃっべていた。
 彼に誘われたことは、素直にうれしい。
 私が、1歩踏み出せば、今が大きく変わっ
てしまう。
 すでに、心が勝手に動き出していた。
 「雨は、いやだね。まだ、降ってる」
 三島課長は、オフィスに戻る途中、窓の外
をチラッと見て呟いた。
 「私、雨って好きです。せつない時もある
けど、やさしくて、なんだかロマンチック
で」