森田さんは、高校の頃、公平が付き合って
いた、瞳にどことなく似ていた。
 そういえば、瞳のこと気になっていたけど
とうとう公平には、聞けなかった。
 「傘どうぞ。前田くんは私の傘に入ってい
けばいいわ」
 森田さんの言い方が、ちょっと上から目線
に感じてしまう。
 「いいよ。オレ走るから」
 そう言って公平は、私にもう一度強引に傘
を渡した。
 「いいわよ。入って」
 なんだか今度は、二人のやり取りに、口出
し出来ずに、事の成り行きを公平の傘を持っ
たまま見守るはめになってしまった。
 ここで、傘の譲り合いをしても遅刻してし
まう。
 そう判断したのか、公平は、森田さんの傘
を持つ選択をしたみたいだ。
 いいのだろうか?あの頃のままの、学生の