町田くんは、ひとつひとつ言葉を、丁寧に
伝えながら、あの頃の記憶を巻き戻してくれ
た。
 「だけどその後、相田に告白されて、ずっ
と相田の存在が公平の中にあったことを、瞳
が、感じとったんじゃないかな」
 波の音が、町田くんの言葉に重なっていっ
た。
 自然に涙が零れてきた。
 あの頃の場面が、頭の中を溢れさせた。
 「ずっと相田に伝えなきゃって思ってた。
公平は、なかなか、あの頃のことなんて言わ
ないだろうからさ」
 いつの間にか、空が赤く染まっていた。
 「ありがとう、町田くん」
 「オレは、公平と相田が一緒にいるとこ見
ると、安心するよ。高校の頃思い出す」
 そう言って町田くんは、背伸びしながら立ち
あがった。
 「町田くんも、香奈のことがんばって」