普通じゃなくて」
 公平が、ゆっくり階段を降りはじめた。
 「それで、泊まったの?」
 「側にいた」
 「きっぱり言わないでよ。ばか!」
 「だけど、何もないよ。信じてもらえない
かもしれないけど」
 公平が、階段を降りてきて、下を向いたま
ま動かない私を、追い越して、改札を抜けて
いった。
 遠くなる背中・・・
 今度は、私が公平を追いかけて・・・
 「だから、さっきから怒ってないってば」
 公平の背中に慌てて叫んだ。
 地下鉄のホームで、公平は、意外って顔で
振り向いた。
 私は、寛大な女なのである。
 「何もなかったこと、最初からわかってた
わよ」
 森田さんの気持ちもわかるから、それで、