「だから、わざとじゃないって言ってるだ
ろ。おまえの胸なんか、オレも触りたくなか
ったよ」
 そんなにきっぱり言われると、よけい頭に
くる。
 「何よそれ。公平になんかもう2度と触ら
せるこたなんてないわよ」
 私も、きっぱり言う羽目になったじゃない
 子供のような喧嘩。最悪の空気。
なのに、もっと最悪なのは、私達の会話が、
暇を持て余していた周りの乗客の視線を、集
めてしまったことだった。
 微かに聞こえる笑い声。
 「笑われちゃったじゃない」
 「ごめん・・・」
 私達は、そのままお互い俯いたままで・・
 久々に会ったのにどうして、こうなっちゃ
うんだろう。
 私の気持ちとは、裏腹に何も躊躇なく進ん
でいる地下鉄の車両。