ショッピングセンターを一通り回って満足したわたしたちは、夕食を食べようとファミリーレストランに入った。

「ねえ、聞いてる?」

ミートソーススパゲティをフォークで巻きながら美希がこちらを見てきた。

「ごめん、もう1回言ってくれる?」

「大丈夫?なんだか今日ぼうっとしがちだよ。どうかした?」

今まで陸について誰にも語る気はなく心に鍵をして隠していたのに、さきほどの人を見かけてから、美希に話したいという衝動に駆られた。

「ごめんね。さっき絶対にいるはずがない知り合いに似た人を見たの。それで気をとられちゃった」

「そうだったんだ。絶対にいるはずがないって?」

「うん、すごく遠いところに引っ越した人だから」

さすがに死んだはずだとは言えなかった。