彼女はいつも、教室の窓側の席で本を読んでいた。
太陽の光が差し込むその場所で、1枚1枚大事そうにページをめくる。その細く長い指先に、思わず見とれてしまいそうになる。
時折、優しい風が窓から吹き込み長いポニーテールをさらさらと揺らす。
その姿はあまりに清らかで美しい。
だから彼女は、僕にとって憧れの存在だった。
今日も昼休みになると、いつもと同じように澄んだ瞳で本を読む彼女。
なぜか教室には誰もいなくて、僕らは教室で2人きりだった。
僕はやることもなく、ドクドクと高鳴る心臓を押さえながら黙って彼女を遠くから見つめていた。
すると突然、彼女の瞳から雫がポタリと滴り落ちた。
「!?」
僕は、どうしたんだ、何かあったのかと思い、彼女に近寄って話しかける。
「な、夏川さん、大丈夫!?」
僕が急に話しかけたので、彼女は涙で濡れた目を丸くして顔を上げた。
「えぇ…大丈夫よ。ありがとう、木村くん」
そう言って微笑んでくれた。
僕はほっと胸を撫で下ろすと同時に、なぜ彼女が泣いていたのか知りたかった。
「ね、ねえ…なんで泣いていたの、夏川さん」
「…この本、すっごく良いお話なのよ。それで…感動して泣けてきちゃって」
「へぇ、そうなんだ」
なるほど、それで泣いていたのかと納得して頷く僕。
「…木村くん」
「な、なに?」
夏川さんが不意に僕の名前を呼んだので、僕は驚いて少しだけたじろぐ。
「陸人くんだよね、下の名前」
「え?う、うん」
高校一年生の5月でまだ知り合って1ヶ月しか経ってないし、世間で言うところの「地味」な僕の名前を覚えてくれていたなんて…。
「私は桜実(おうみ)よ。よろしくね」
朗らかにそう告げる彼女。嬉しそうな笑み。
「可愛い名前だね、よろしく」
「ありがとう」
今度はにっこりと彼女は笑っていた。
太陽の光が差し込むその場所で、1枚1枚大事そうにページをめくる。その細く長い指先に、思わず見とれてしまいそうになる。
時折、優しい風が窓から吹き込み長いポニーテールをさらさらと揺らす。
その姿はあまりに清らかで美しい。
だから彼女は、僕にとって憧れの存在だった。
今日も昼休みになると、いつもと同じように澄んだ瞳で本を読む彼女。
なぜか教室には誰もいなくて、僕らは教室で2人きりだった。
僕はやることもなく、ドクドクと高鳴る心臓を押さえながら黙って彼女を遠くから見つめていた。
すると突然、彼女の瞳から雫がポタリと滴り落ちた。
「!?」
僕は、どうしたんだ、何かあったのかと思い、彼女に近寄って話しかける。
「な、夏川さん、大丈夫!?」
僕が急に話しかけたので、彼女は涙で濡れた目を丸くして顔を上げた。
「えぇ…大丈夫よ。ありがとう、木村くん」
そう言って微笑んでくれた。
僕はほっと胸を撫で下ろすと同時に、なぜ彼女が泣いていたのか知りたかった。
「ね、ねえ…なんで泣いていたの、夏川さん」
「…この本、すっごく良いお話なのよ。それで…感動して泣けてきちゃって」
「へぇ、そうなんだ」
なるほど、それで泣いていたのかと納得して頷く僕。
「…木村くん」
「な、なに?」
夏川さんが不意に僕の名前を呼んだので、僕は驚いて少しだけたじろぐ。
「陸人くんだよね、下の名前」
「え?う、うん」
高校一年生の5月でまだ知り合って1ヶ月しか経ってないし、世間で言うところの「地味」な僕の名前を覚えてくれていたなんて…。
「私は桜実(おうみ)よ。よろしくね」
朗らかにそう告げる彼女。嬉しそうな笑み。
「可愛い名前だね、よろしく」
「ありがとう」
今度はにっこりと彼女は笑っていた。