それから何分たったのか。

分からないけど、突然前から男の人が現れた。

……制服だ。

同い年ぐらい?

私は、頑張ってこの涙を引っ込めて立ち上がった。

こんな顔、見られたくない。

まだおぼつかないけどフラフラと歩いていく。

ひな君の家に行くの、辛いよ……。

また、思い出そうとしたら。

もうすぐで男の人ととおりすがるっていうのに涙がまた出てきた。

だ、ダメ!

今は、出てきちゃダメ!

でも、涙は止まらなくて。

私は急にしゃがんでしまった。

…………?

すると、突然男の人も立ち止まって。

私を見てる?感じがした。

な、何……??

恥ずかしいんだけど。

「あの……。」

ビクッ。

急に話しかけられ、びっくりした。

「俺のハンカチ、使いますか??」

そんな、優しさいらないよ。

恥ずかしいじゃんか。

でも、涙は止まらなくて。

嫌だけど、男の人のハンカチを借りることにした。

「……ありがとうございます。」

「…………。」

……??

なに……??

私がそのハンカチを受け取ろうと顔をあげたら。

その男の人は急に黙った。

「あの、ハンカチ……。貸してくれないんですか?」

自分で言っといて、貸してくれないの?

「あ、すいません。知人と顔ソックリで。少し驚いてしまいました。」

「……はあ。」

そんなにソックリなのかな。

……まあ、そんなのはどうでもいいけど。

この涙を引っ込めて早く行かなきゃ、私にはひな君との約束がある。

あの約束は果たさなきゃ。

「ハンカチ、ありがとうございます。また会えるかわからないので、返します。このままですいません。」

「ああ、いいですよ。そのハンカチ使っててください。」

「え、いやいや。これあなたのですし、いつ会うかわかりませんよ?」

「……また会いますよ。」

……??

何いってんの、この人。

「じゃあ、また。」

「え、ちょっと……!!」

その人は私の言葉を無視してそそくさと駅の方向へと言ってしまった。

……何なの、あの人。