「彩」

俺は学校について支度をしている彩に
声を掛けた。


俺が立っていて彩は座っているため必然と
覗き込んでくるカタチになってしまう。


「ほら、課題だよ。理科の。」


そう言って渡したのは、昨日電話が
終わってから綺麗にまとめなおした、
理科の課題だった。



「あー、そうだね。すっかり忘れてたわー。
ごめん、ありがとう」


「おう。返すのは、明日で良いから。
ったく、感謝するんだな」



いつも通りの憎まれ口だが、彩はもう
慣れたらしく軽く受け流す。



「ん?」

彩はドアの方を見て眉をひそめた。
それが気になって俺もドアの方を見る。


見ていたのは、沢良宜が出て行こうと
するところだった。


「どうしたんだろ。予鈴まであと3分
くらいなのに」