とんでもない計算外だ。



というか、どういうことだ?



編集長が反対? 言い出しっぺの編集長が?



「わけがわかりませんよ! ふざけてんですか!?」



「俺だって同じ気持ちなんだ。そう叫ぶな。」



「だって、編集長が言い出したんですよね? その編集長が猛反対してるってどういうことですか? 意味わからないですよ! 更年期障害なんですか、編集長は!」



「落ち着け! ここ、一応オフィス内なんだぞ?」



落ち着けと言われても、落ち着けるわけがない。これで、編集長の独断で、この話がなかったことになったら、私の立場は? 頑張りは? あの涙は? 誠司さんとの生活は?



一体どうなるって言うんだ、くそったれ!



「編集長が言うには、『ラブストーリーとしては申し分ない。ただ、これがカミツレで頭を張れる作品だとは思わない。』だそうだ。」



「そ、そんなの当たり前じゃないですか! 私には恋愛小説は向いてないって言われてるんだし、それに、ブランクだってありますよ?」



「ただ、お前は『エゴイスト』をカミツレで出して、ベストセラーを出してしまった。サスペンス作家としての看板を背負ってるんだよ。だから、恋愛小説を書くなら、カミツレで一位、までとはいかなくても、本を出版して、ベストセラーを出せるだけのものじゃないとダメだってことだ。コンバートっていうのは、それくらい大変なことなんだよ。」



そんな……。



そんなこと……。