僕は素じゃない部分の柚木を知らないんだ。僕以外の人が仮面上の柚木しか知らないのとは反対に、僕は仮面を被っていない柚木しか知らない。だから誰も彼女を語ったりすることはできないんだ。

 「僕の先入観で、柚木はいつも自分の正義に忠実なんだと思っていたんだ。君を信じている人はとても多い。だからこそ君は、君の思っている正義が絶対だとして行動しているんだと思っていたんだ。悪く言えば、君は他人の信頼を糧にして自分のしていることを正しいことにしていると、勝手に決めつけてしまっていた」

 同じ内容を違う言葉で長々と言っているように感じて、こんなに聞き飽きそうな注釈を入れなくてもよかったな、と思った。柚木は僕の顔を見つめながらじっと聞いている。

 「だから、思い込みで君の人格を決めつけてしまっていたから、謝ったんだ」

 自分でも驚くくらい正直に、僕は自分の思っていたことを伝えた。ねじ曲がった思考回路が整うなんて珍しいこともあるものだと、自分に感心してしまう。