「文脈が読めないなぁ。倉木くんはいったい何を私に謝罪しているんだい?あ、もし謝罪の対象が私でないなら言ってくれるとありがたいな。自意識過剰な人とは思われたくないからね」

 相手のことを知りもしないのにその人について語ることは身勝手なことだ。理解したと思ったその人もほんのごく一部でしかないのに、それをさも自慢げに語るのはただの自己満足にすぎない。他人の知らないことを知ったつもりになって優越感に浸りたいだけなんだ。

 僕自身も、どこかで柚木を他の奴らよりも理解していると思っていたのかもしれない。

 彼女の最も素に近い部分を、僕だけが見ていると思っていた。それはきっと事実で彼女自身も僕に自分を晒しているという自覚があるに違いない。そう思うことすらも傲慢なのかもしれないけど、高い確率で正しいと言える。

 けれど、じゃあ僕が彼女のことをすべて語り尽くせるかと問われればそれは肯定できない。僕の知っている彼女の素の性格もまた、彼女自身の一部分でしかないのだから、僕には彼女を語れない。