人望があるということは信頼されているということだ。誰もが柚木かをりという人間を正しいと思って、言うことすべてを鵜呑みにしている。良く言えば従順、悪く言えば思考を放棄してしまっている。

 クラスのほぼ全員の信頼を得ている彼女だからこそ、彼女は自分の正義というものに疑いを持たず、その体現者となっているのだと思っていた。傲りとさえ思えるほどの自信家。それが柚木かをりを柚木かをりたらしめている要素の一つだと、そう思っていた。

 けれどそれは単に僕がそう思っていただけで、一方的な思考の押しつけでしかなかった。僕が見えていない柚木かをりを知らなかっただけで、先入観によって彼女の人格を決定づけていたんだ。

 「ごめん、柚木」

 ただでさえ理想像を押しつけられている彼女に、僕まで自分の中にいる柚木かをりを当てはめてしまっていた。そんなの僕が間違っているに決まっている。彼女がどう思っているかなんて関係なしに、一方的な価値観で話すのは一種の傲慢だ。