口を尖らせてそう言うと、柚木は折りたたんだイチゴオレのパックをゴミ箱に向かって勢いよく放り投げた。フリスビーのような横回転をしたそれは器用にゴミ箱の中へと吸い込まれていった。


 柚木は常に、自分の中にある正しさを貫いて生きているものだと思っていた。

 誰しもきっと、心の内に正義というものは存在する。ほんの些細なことでもいい。例えば道端に落ちているゴミは拾うこと。電車でお年寄りに席を譲ること。そういうことは多分正義の類に属すものだ。そういう行動を起こすにせよ起こさないにせよ、そういう行動を起こす人がいたとして、それを否定したりは誰もしないだろう。


 だから正義というものは、総じて良いこととされることが多い。

 
 それもまた多数派の意見に違いはなくて、だからきっと正義が善とは限らないと僕が言えば、その意見は淘汰されるのだろう。そう考える人は少数派だから、きっと仕方のないことだ。

 そして、柚木はいつも多数派で生きている人間だと思っていた。